YPAM2021
横浜国際舞台芸術ミーティング2021(YPAM2021)
会期:2021年12月1日〜19日
主会場:KAAT神奈川芸術劇場、BankART KAIKO
主催:横浜国際舞台芸術ミーティング2021実行委員会(公益財団法人神奈川芸術文化財団、公益財団法人横浜市芸術文化振興財団、特定非営利活動法人国際舞台芸術交流センター)
共催:横浜市文化観光局
助成:公益財団法人セゾン文化財団、リコー社会貢献クラブ・FreeWill
協力:BankART1929、特定非営利活動法人黄金町エリアマネジメントセンター
後援:外務省、神奈川県、国際交流基金、公益社団法人全国公立文化施設協会
主催者からのご挨拶
玉村和己
公益財団法人
神奈川芸術文化財団 理事長
私どもが主催団体として参画してきました「TPAM – 国際舞台芸術ミーティング in 横浜」が、今回より「YPAM – 横浜国際舞台芸術ミーティング」と名称を変え、2021年12月に新たに開幕致します。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、舞台芸術の置かれた状況が大きく変化している中、改めて、この催事を支えて下さる多くの皆さまのご尽力に深く感謝申し上げます。
私ども財団のKAAT神奈川芸術劇場では、今年も「YPAMディレクション」の主会場として施設を提供し、運営に参画致します。そしてこの状況下においても、変わらず舞台芸術を創造し続けるアーティストの皆様に最大限の敬意を表しバックアップするとともに、「ひらかれた劇場」として、地域の皆様一人ひとりに本催事をより一層身近に感じて頂けるよう、劇場一丸となって取り組んでまいります。
名実ともに、国際文化交流先駆けの地である横浜、神奈川において、新たに生まれ変わったYPAMが、これからも末永く発展し続けることを願っております。
近藤誠一
公益財団法人
横浜市芸術文化振興財団 理事長
コロナ禍により、文化芸術やアートの価値とは何なのか、芸術によって表現するということにどんな意義があるのか、ということが問い返されています。また、今の状況はコロナ禍でダメージを受けた文化芸術をどうやって再開、継続するかというところに重点が置かれていますが、もう一つ、パンデミックでダメージを受けた都市や社会を回復するのに、文化芸術がどういう役割を担うことができるか、という点も大切です。
横浜に開催の場を移して10年、TPAMは舞台芸術に関わるものたちのネットワークであると同時に、アーティストと社会をつなぐネットワークでもあるよう、舞台芸術を通した地域へのコミットメントにも重きをおき、「YPAM」へとシフトしました。これまで培ってきた国際的プラットフォームとしての基盤と、横浜の街とのより一層の深化をしてまいります。
新型コロナウイルスの影響がまだまだ払拭されてはいない中、YPAMの取り組みが、舞台芸術の新たな役割や社会的価値を提示できることを願っています。
丸岡ひろみ
特定非営利活動法人
国際舞台芸術交流センター 理事長
横浜国際舞台芸術ミーティング
ディレクター
YPAM(横浜国際舞台芸術ミーティング)は、「舞台芸術/パフォーミングアーツ」という語で緩やかに名指される演劇・ダンス・パフォーマンスなどの実演型・遂行型・参加型芸術に取り組み、その創造・普及・国際交流に従事する人々が集まるプラットフォームです。
1995年に「TPAM」として東京で開始、2011年から横浜で開催し、海外40ヵ国以上から多数のプロフェッショナルが集まる舞台芸術プラットフォームとして国際的認知を確立しましたが、2020年2月の開催直後にパンデミックが宣言され、舞台芸術は史上最悪とも思われる逆境を迎えることになりました。世界の多くの地域で、よほど強大な全体主義国家でもそう簡単には実行不能と思われる規模と迅速さで、法的にであれ社会的にであれ、上演とその観賞が禁じられそれが受け容れられました。禁止が解除されても、その禁止が実現したこと、それが受け容れられたことのインパクトは簡単には取り消されないでしょう。
TPAMからYPAMへの移行がこのような歴史的時期に重なったことは、困難でもありましたが、語弊を怖れずに言えば、興味深いことでもありました。世界各地の舞台芸術関係者の間にはこの時期、これまでにない連帯が生まれたと思います。しかしその連帯には、舞台芸術の存在理由やその国際交流の必要性に関して掻き立てられた疑念、あるいは逆に、どんな条件が与えられても舞台芸術はそれに適応し応答する能力があるというオプティミズムが伴っていたように思います。歴史上、表現や移動に対する弾圧はいろいろとあったでしょうし、今でもあります。しかしこの逆境はどうもそういうものではないようです。この経験を経て私たちは何を失い、何を得ることになるのでしょうか。
第1回YPAMでは、12月1日から19日の約3週間にわたって以下のプログラムを実施します。
「YPAMディレクション」は、作品の紹介を通して舞台芸術関係者間の議論の触発を狙う公演プログラムですが、問題意識を共有する一般のお客様にもぜひご覧いただきたいと思います。1995年、第1回TPAMの公演プログラムは劇団態変とオーストラリアのバンガラ・ダンス・シアターでした(東京国際舞台芸術フェスティバルと提携して実施)。四半世紀を経て、YPAMとしての第1回開催にあたり、態変の最新三部作「さ迷える愛・序破急」を一挙上演、ライブ配信も実施します。完結編『心と地』は、コロナ禍の中での三度の延期を経て、今年11月に伊丹アイホールで初演されます。資本主義と管理社会の行く末を問うSFになるそうです。その問い、そして感染症に対する脆弱性が高いと言われる重度身体障碍者の劇団が粘り強くライブ上演にこだわったという事実から、私たちはまだ何かを学ぶことができるでしょうか。
2014年に設立された国際交流基金アジアセンターの2020年までの期限つきプロジェクト「文化のWA (和・環・輪)プロジェクト〜知り合うアジア〜」のおかげで、TPAMディレクションは国内外のゲストディレクターとの協働を深め、6年間で10本の東/東南アジアの国際共同製作に参画することができました。当面その規模を継続する見通しは立っていませんが、YPAMディレクションは今後、横浜からの作品発信の場ともしていきたいと考えています。オル太、ヤン・ジェンには来年新作の委嘱をする予定ですのでご期待ください。なお、ヤン・ジェンは今年のYPAMで唯一の海外からの招聘者となります(連携プログラムは除く)。
渡航制限により海外からの参加が残念ながら依然としてほとんど見込めない今回、舞台芸術関係者の交流プログラム「YPAMエクスチェンジ」は、来場/オンラインのハイブリッドで実施します。そのためにSwapcardというウェブプラットフォームを導入しました。このプラットフォームはTPAM/YPAMとのパートナーシップ関係にある世界各地のイベントが相次いで導入しており、共通アカウントによるイベントを横断した通年でのネットワーキング促進も期待されます。トークセッションは全て、登壇者が全員オンライン登壇である場合でも、横浜の会場(BankART KAIKO)から横浜の時間でライブ発信します。オンライン参加者はもちろん、来場参加者の皆様もご自分のデバイスを持って会場にお越しいただくことで、その場にいる参加者とオンライン参加者の両方との交流ができるはずです。
基調講演には、横浜中華街で生まれ育ち、無国籍者としてアイデンティティ・ポリティクスと国際交流を考え抜いた陳天璽さん(無国籍ネットワーク代表/早稲田大学国際教養学部教授)を迎えます。無国籍者に関する陳さんの考察は、グローバルであれインターナショナルであれ、国家を基本単位としたシステムから排除される存在について教えてくれます。その視点から、国境を超えて交流することの意味をとらえ直すこともできるのではないかと思っています。
参加アーティスト/カンパニーにとっては作品を国内外のプロフェッショナルに見せる機会、プロフェッショナルにとっては新しい作品を発見する機会として活用されてきた「TPAMフリンジ」は、渡航制限によってその機能の少なくとも半分を失いました。それは遅かれ早かれ回復するとしても、この期間に私たちはフリンジのもう一つのミッションを再発見できたように思います。それは、当たり前のことのようですが、ライブ・パフォーマンスの自由な表現を無条件に受け容れる場として長期継続することです。この再認識をもって、フリンジフェスティバルとしての「YPAMフリンジ」にこれまで以上に注力したいと思います。交流の場としての「フリンジセンター」の開設、一般のお客様にも公演チケットをお気軽に購入いただくためのチケットシステム開発、運営システム開発費捻出のためのクラウドファンディング・キャンペーン、プログラム冊子の地元コミュニティへの配布、横浜の多様な会場とのネットワーク構築など、この場の確立と拡張に向けた新たな取り組みを徐々に始めています。今回も50組近いライブ上演の参加登録をいただき、決意を新たにしているところです。
この他にも、横浜の芸術文化支援団体との特別協力による「YPAM連携プログラム」を展開します。2011年以来TPAMディレクションの主会場として技術とアイデアを提供いただいたKAAT神奈川芸術劇場(公益財団法人神奈川芸術文化財団)、プロフェッショナルなダンス環境の整備とクリエイター育成のため昨年オープンしたDance Base Yokohama、横浜ダンスコレクションを1996年から開催し続け横浜にコンテンポラリーダンスの文化を根付かせた横浜赤レンガ倉庫1号館(横浜市芸術文化振興財団)との連携による、見逃せない作品・企画が並びますのでどうぞご期待ください。
末筆になりましたが、企画や場所、資金などにおいて新たにご協力をいただきました関係者の皆様、そして何より参加者の皆様に深く御礼申し上げます。